日本語に直訳すると「野菜人間たちの復讐」といったところでしょうか。
優しげな水彩のタッチと軽やかな色使いに似合わぬ、奇妙でちょっと物騒なタイトルの絵本。
絵を描いたのは、アメリカ生まれでイギリスで活躍した画家&イラストレーター、フローレンス・ケイト・アプトン(Florence Kate Upton, 1873-1922)です。
文はフローレンスの母親バーサ・ハドソン・アプトン(Bertha Hudson Upton, 1849-1912)。
フローレンスの絵本は、代表作の“ゴリウォーグ”シリーズをはじめ、ほとんどが母バーサとのコンビによるものです。
フローレンスとバーサ、彼女たちが生み出した、かつての人気キャラクター“ゴリウォーグ”については改めて書くことにして、まずはこの魅力的な絵本「The Vege-Men’s Revenge」を見ていきましょう。
挿絵のみ、最後のほうまでご紹介しますので、本文込みでちゃんと読みたいという場合は、キャベツが囁いている後くらいで止めてくださいね。
この作品はパブリックドメインになっており、トロント・パブリック・ライブラリーで全編ダウンロード(PDFで約63MB、一部欠損あり)出来るほか、以前は国内外ともにあまり取り扱いがなかった実物の絵本のほうもチラホラ見かけるようになっています。
The Vege-Men’s Revenge” (1897)
野菜スープの材料を収穫するために畑に向かった主人公ポピーちゃん。待ちかねていた様子のニンジン氏とトマト氏に「だったら私たちが最高のものを提供してあげる」と誘われて、タマネギたちが引く馬車に乗り込みます。
穴の中に案内され、地面の下に降りて行くにつれ、段々こわくなってきたポピーちゃん。
え?
何やら耳もとで囁いているキャベツさんですが…
ポピーちゃん…
毎日、水やりして大切に育てる野菜たち。
わーい、芽が出た!(違う。いや、そう?)
ポピーちゃん…?
Let the party begin!
楽しそう。
とらのバター的な。
悪い夢?
とてもリアルな。
帰ったら、お母さんに話さなくちゃ。
多分ちょっと自分を励ますために、大きな声で歌いながら、ポピーちゃんは家路を急ぎます。
…と、だいたいこんな雰囲気です。
絵だけで追うと、少しブラックでユーモラスといった程度ですが、文章を読むとなかなかにこわい書き方の箇所もあり、子どもたちが野菜嫌いにならなければよいが、と心配になるほど(笑)
ですが、フローレンス・ケイト・アプトンが描いた野菜たちは表情豊かで可愛らしく、憎めない魅力があります。
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