ドロシー・ヒルトン(Dorothy Hilton)の"オレンジとレモン"
19世紀末から20世紀初頭にかけての美術史に、ほんのチラリと姿を現し消えていったドロシー・ヒルトン(Dorothy Hilton/Dorothy Frances Hilton)。 これは彼女がデザインし、今も商品化されている子ども部屋用の壁紙"Oranges and Lemons, Say the Bells of St. Clements"(1902年)です。 タイトル通り、マザーグースの“オレンジとレモン”を歌いながら遊ぶ子どもたちを題材にしており、元々はウィリアム・モリスなどの高級壁紙を生産していたジェフリー&カンパニー(Jeffrey and Company, 1836~1930年まで営業)で販売されていました。 日本で最初にこの作品にスポットが当たったのは、2018年に開催された『ウィリアム・モリスと英国の壁紙展』辺りでしょうか。その当時に比べて、このイラストを使用した商品の数は増えたと感じますが、その作者については相変わらず、ほとんど何も情報がありません。 確かなのは、バーミンガムを拠点としてアーツ・アンド・クラフツ運動に参加し、少なくとも1910年代前半までは、美術雑誌“The Studio”や展示会のカタログに名前が登場すること。 また、クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館のサイトによれば、姉妹のアグネス・ヒルトンもデザイナーでイラストレーターでした。