マーシュ・ランバート(H.G.C. Marsh Lambert)
イギリスのイラストレーター、H・G・C・マーシュ・ランバート(1888-1981)。
フルネームは、ヘレン・グレース・カルヴァウェル・マーシュ・ランバート(Helen Grace Culverwell Marsh Lambert)で、通常"H. G. C. Marsh Lambert"と表記されます。
生まれはブリストル。イギリス及びアイルランドのアーティストについて書かれているサイト "Artist Biographies"によれば、父親は靴下やニットウェアを扱う衣料品業者で、母親はアメリカ人であるとのこと。
どこで学び、どういう経緯でイラストレーターになったのかなどは不明ですが、1911年の国勢調査では職業欄に"挿絵画家と記入されており、既に仕事を始めていたことがわかります。当時、彼女は23歳。両親と使用人1名と共にロンドン北部のバーネットに居住していました。
1913年に銀行家のチャールズ・T・ランバートと結婚。以降イラストレーターとしての名前にもランバート姓を使うようになりました(マーシュが彼女の旧姓)。
子どもは、少なくとも娘がひとりいたようですが、それ以外にもいたのかは不明。家族についての記述で、“子どもたち”としているものもあるので複数人いたのかもしれません。
主にポストカードや児童書の挿絵を描いていましたが、彼女のイラストが描かれた食器セットなども販売されていたことから、かなり人気のあるイラストレーターであったことが窺えます。
にも関わらず彼女自身についての情報がこれほど少ないのは、活動のピークが1930年代くらいまでで、第二次世界大戦後は目立った活躍がなかったためでしょうか。
もっとも、彼女が人気イラストレーターでなかったら、その僅かばかりの情報さえ不明なままだった可能性もありますが。
亡くなったのは1981年ですが、晩年の様子や死因などについても詳しいことはわかっていません。
"Girls for the Allies"と題されたシリーズから
第一次世界大戦の連合国の少女たちをその国の国旗と共に描いています
日本とロシアのこれは“国旗”ではないですが、制作の目的には適っているからいい…のか?
これも時代を色濃く反映した、"Khaki Kiddies"と呼ばれているシリーズ
様々な国の子どもたち
よく見るとこれは、当時のイギリスの植民地だった国々の紹介ですね
こうやって見ると、マーシュ・ランバートは時局に対して素直というか無邪気というか、これほど多作で人気もありながら、その後イラストレーターとして不動の地位を得るには至らなかったのは、そういうある種の従順さにも一因があったのではないかと感じます。
まだ“Lambert”姓ではなかった頃の作品
サインが“H.G.C. Marsh”のみです
これも“H.G.C. Marsh”時代
花の妖精のシリーズ
※花の妖精のシリーズについては、こちらの記事で更に詳しく取り上げています
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