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4月, 2024の投稿を表示しています

エセル・ヘイズのピーターラビット

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今まで、岡本帰一とミロ・ウィンターのものをとりあげてきた“無許可版”のピーターラビット。今回はアメリカの漫画家でイラストレーターのエセル・ヘイズ(Ethel Hays, 1892.3.13-1989.3.19)の絵本を。 ※当時の“無許可版”を取り巻く状況については こちらの記事 で説明しています。 エセル・ヘイズは元々、新聞連載の漫画を描いていた漫画家。1920~30年代にかけて、その分野で最も成功した女性の一人と言われています。 その後、結婚・出産を経て児童文学のイラストレーターとして活躍するようになりました(彼女の経歴については、またいずれ)。 ヘイズが描いたピーターラビットの絵本が出版されたのは1942年。前回のミロ・ウィンター同様、すでに確固たる地位を築いた上での仕事でした。 古書として流通しているものを見ると、表紙は少なくとも4~5種類はあるようです

佐伯春虹(SAEKI Shunkō)

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富山県出身の日本画家、佐伯春虹(SAEKI Shunkō, 1909-1942)。 将来を嘱望されながら33歳の若さで亡くなり(詳しい病名などは不明)、ほとんど忘れ去られていた彼の存在に光があたったのは、2006年のことでした。東京都港区の森美術館で開催され、その後ベルリンにも巡回した『東京-ベルリン/ベルリン-東京展』─そこに春虹の作品「茶苑」(1936年)が展示されたことがきっかけで、再び注目を集めるようになったのです。 日本画の中に近代的な題材を取り入れた作品は日本のモダニズムという文脈で海外でも紹介され、今や、このブログを含めネットの海のそこかしこで彼の作品を見かけるようになりました。が、早世であったことと、長らく無名のままだったことで、情報はあまり多くはありません。それどころか表に出ているもので確実に彼の作品だと言えるものも数えるほどしかない状態です。 その中で辛うじて見つけた情報は以下の通り。 富山県出身の日本画家、佐伯春虹(1909-1942)─伊東深水に師事し、十代でパリ万博に作品を出品するなど、その才能は高く評価されていましたが、33歳の若さで病没。活躍期間の短さが惜しまれます。 画像は20代後半の作品「茶苑」(1936年)。 pic.twitter.com/rz1O9eaenl — カトウ・ニニ。 (@ninikatu) April 13, 2024 ただ、その後もいろいろ確認してみたところ少し疑問点も出てきたので、その辺も含めて改めて。 1909(明治42)年、富山県で生まれたとされる佐伯春虹。上記ツイート(ポスト)の情報は富山県のホームページで確認できるのですが、そこでは“17歳で伊東深水に入門、昭和2年にパリ万博に出品”となっています。公のサイトでもあることから、それ以上確かめもせずに「入門してすぐに、師の推薦を受けるなどしてパリ万博にも出品したのだろう」とすんなり納得してしまいましたが、昭和2年(1927年)にパリ万博は行われていませんよね? 佐伯春虹の存命中にパリ万博が開催されたのは1925年と1937年。1925年には15~16歳です。絶対とは言えませんが、ここで出品したとは考えにくいでしょう。 一方、伊東深水の門下に入った時期について。伊東深水が佐伯春虹も在籍していたとされる画塾を開いたのが1927年の2月なので、満年齢の17歳で